離婚ができる浮気の条件を解説


配偶者の浮気を理由に離婚ができると知っている方も多いと思います。
しかし、離婚ができる浮気には一定の条件があるのですが、その条件を理解していない方も多いのではないでしょうか?
浮気と感じる行為は人により異なりますが、裁判で離婚ができる浮気には一定の条件を満たす必要があります。

夫婦の間でどこからが浮気になると約束をするのは自由ですが、その約束を破ったら裁判で離婚ができる訳ではありません。
浮気を理由に離婚を成立させるには法廷離婚事由が必要があり、その一つに不貞行為があります。

裁判で離婚ができる浮気の条件が分かれば、配偶者が離婚に同意しなくても裁判で離婚が成立します。また、夫婦の話し合いで離婚を成立させるときも、話し合いが有利になる場合があります。
離婚ができる浮気の条件を解説します。

❏【 目 次 】 離婚ができる浮気の条件を解説


離婚が成立する条件

結婚をするには、当事者の両者が結婚に合意する必要がありますので、両者が合意しなければ結婚はできません。
離婚も夫婦双方の合意が原則として必要ですが、一方が離婚に同意しなくても裁判で離婚が成立する場合があります。
つまり、相手が離婚に同意しなくても、一定の条件を満たせば裁判で強制的に離婚が可能です。
また、裁判で離婚ができる事実があれば、配偶者は裁判をしても結果が変わらないと考え協議で離婚に応じる可能性があります。

離婚には原則として夫婦双方が合意が必要

結婚に必要な条件は年齢のみであり、18歳以上の男女であればお互いに結婚に合意していれば誰でも結婚ができます。
離婚も原則として同じで、夫婦双方が離婚に合意していればその他の条件はなく、離婚届けを役場に提出すれば離婚が成立します。
ただし、全ての夫婦で離婚の合意ができる訳ではなく、一方が離婚に同意しないケースは少なくありません。

一方が離婚に同意しない理由はさまざまですが以下の理由があります。

  • 離婚原因に納得ができず離婚に同意しない。
  • 夫婦仲が険悪で話し合いが進まない。
  • 意地やプライドの感情的な理由で離婚に同意しない。
  • 離婚後の経済的な理由を考え離婚に同意しない。
  • 相手の所在が分からず離婚の話し合いができない。
  • 親権で合意できず離婚が成立しない。
  • 財産分与、慰謝料、養育費など金銭の取り決めで同意できない。

配偶者が離婚に同意しないときには、その原因を解決しなければ離婚ができません。
離婚をする夫婦は夫婦仲が悪くなっている場合が多く、夫婦仲の悪さが原因で離婚が成立しない原因の一つです。離婚を考えている夫婦はお互いに不満を持っていますが、必要以上に夫婦仲を悪化させない対応が大切です。
また、財産分与、慰謝料、親権の離婚条件で折り合いが付かないときは、条件を譲らなければ離婚の成立が困難な場合もあります。

夫婦で離婚の合意ができないときには、法廷離婚事由があれば相手の同意がなくても離婚ができます。

裁判で配偶者の同意なしに離婚ができる法廷離婚事由

相手の同意がなければ原則として離婚はできませんが、民法に定める「法廷離婚事由」があれば裁判で離婚ができます。
法定離婚事由(ほうていりこんじゆう)は民法第770条の規定で、相手の同意がない場合に裁判で離婚を成立させる際に必要な5つの事由です。
簡単に言うと、法定離婚事由の何れかの事実があれば、相手の同意がなくても裁判所の判決で離婚が成立します。

民法で定めている5つの法廷離婚事由

  1. 不貞行為(770条1項1号)
  2. 悪意の遺棄(同条項2号)
  3. 3年以上の生死不明(同条項3号)
  4. 強度の精神病に罹り、回復の見込みがない(同条項4号)
  5. その他婚姻を継続し難い重大な事由がある(同条項5号)

離婚ができる浮気の条件である「1.不貞行為」と「5.その他婚姻を継続し難い重大な事由がある」の2つを解説します。


離婚ができる浮気の条件

法廷離婚事由の一つに不貞行為があり、配偶者以外と性的関係を持った場合には離婚が可能です。
ただし、例外もあり離婚が認められない不貞行為もありますし、1度だけの不貞行為では離婚が認められない場合もあります。
また、法廷離婚事由では、その他婚姻を継続し難い重大な事由も離婚ができると定めています。
非常に抽象的な表現ですが、不貞行為がない浮気でも「婚姻を継続し難い重大な事由」と認められれば離婚が可能です。

性的関係があったかが重要

不貞行為は法廷離婚事由に該当し離婚が認める条件の一つです。
民法で言う不貞行為は、「配偶者のある者が、配偶者以外の異性と、自由意志で肉体関係を持つ」と最高裁で定義されています。また、不貞行為は「男女間の性交渉とそれに類似する行為」と定義されています。
「男女間の性交渉」は明確ですが、「性交渉に類似する行為」は過去の事例から口腔性交や射精を伴う行為が該当するようです。

裁判所が離婚を認める浮気は、性的関係があったかで判断されますのでキスやデートの性的関係がない関係では離婚が認められません。
ただし、性的関係がない浮気でも、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると判断されれば離婚ができます。
最近では同性愛を認める考えが広がり、必ずしも性別にとらわれない司法判断があります。少数ではありますが、同性との間で行われた不貞行為も離婚事由と認める判決があります。

自由意志で行った性的関係のみ離婚ができる

離婚ができる不貞行為は、自由意志で性的関係を持った場合のみです。
強姦や脅迫で性行為を強要されたケースでは、自由意志で性的関係を持ったとは考えられず離婚は認められません。性被害を不貞行為と認める判断は、倫理上にも大きな問題があり当然と言えるでしょう。

合意がない性行為は、暴力や地位を利用し強要された場合だけでなく、薬物やアルコールで正常な判断ができない状態での性行為も該当します。
一方で、友人から誘われたりナンパで積極的に求められ応じた性行為でも、合意していれば自由意志で行った性行為と判断されます。
どちらが性行為を誘ったかは考慮されず、誘いに乗った方でも自由意志で性的関係を持ったと判断されます。

一回のみの不貞行為では認められない場合がある

一度だけの不貞行為でも法廷離婚事由の不貞行為に該当しますが、裁判では離婚が認められない可能性があります。
民法770条2項には「裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却できる。」とされています。
不貞行為を理由に裁判で離婚を成立させるには、継続的な不貞行為がなければ難しく、1回のみの不貞行為では離婚を認めない判決があります。

明確に何度の不貞行為で離婚を認める基準はありませんし、不貞行為の回数だけで判断される訳でもありません。裁判では一切の事情を考慮して、離婚を認めるのか認めないのかの判断をしています。
一般的には、かなり以前の不貞行為、ナンパなど偶発的な不貞行為、風俗など恋愛感情が伴わない不貞行為では、一度だけでは離婚を認めない傾向にあるようです。理由としては、「婚姻を継続しがたい重大な事由」とはまでは言えないからです。
配偶者に愛情を強く持っており反省していれば「婚姻関係を破綻させた」とは判断されない傾向にあるようです。
浮気を理由に裁判で離婚を成立させるには、継続性や浮気相手と深い関係になっている事実を証明できれば離婚ができる可能性が高くなります。

風俗で行った不貞行為でも離婚できる

風俗でも「男女間の性交渉とそれに類似する行為」があれば不貞行為と判断されます。不貞行為は、金銭の受け渡しがあっても免除されませんので、愛人や援助交際でも不貞行為に該当します。
ただし、一度や二度だけでは「婚姻関係を破綻させた」とは判断されず、裁判でも離婚が認められない場合が多いようです。
何度も話し合ったが風俗通いを辞めないなど婚姻関係が破壊されたと判断されれば離婚ができる可能性があります。また、出会いが風俗でも恋愛感情があり継続して不貞行為があれば、離婚請求を認める可能性があります。

スナックやクラブなど性行為を伴わないお店の利用は、不貞行為がないので原則として離婚を認めません。ただし、相手がスナックやクラブまたはホストの従業員でも、個人的な関係やアフターで性行為があれば不貞行為に該当します。
風俗での不貞行為は一度だけでは離婚を認めない傾向にあり、夫婦関係を破壊させた具体的な証拠が必要です。

夫婦関係が破綻した後の不貞行為では離婚できない

不貞行為があった場合でも、夫婦関係が破綻した後に行われた不貞行為は離婚を認めない傾向にあります。すでに夫婦が別居や家庭内別居の状態にあると、不貞行為があっても離婚理由とはならないようです。
理由としては、不貞行為が原因で夫婦関係が破綻したとは考え難いからです。不貞行為が原因で夫婦仲が悪くなり、婚姻関係が破綻した事実が必要です。
一方で、浮気が原因で夫婦関係が破綻し、その後に別居に至った場合は離婚できる可能性が高いです。
ただし、夫婦関係の破綻と不貞行為のどちらが先かが重要であり証明が難しい問題があります。

浮気をした人からの離婚請求は認められない

不貞行為を理由に離婚請求ができるのは不貞行為の被害者側のみです。
不貞行為を行った者は、離婚原因を作った有責配偶者であり原則として離婚請求は認められません。
離婚原因である不貞行為を行った人から離婚請求ができてしまうと、あまりに身勝手で著しく不条理ですので当然の結論です。
ただし、一定の条件を満たせば離婚請求を認める場合もあるようです。
別居期間が相当長期である、未成熟の子どもがいない、相手が精神的・社会的・経済的に過酷な状況にならないときは、有責配偶者からの離婚請求を認める場合もあります。


浮気を理由に離婚を成立させる方法

裁判で離婚を認める浮気がある場合でも、離婚を成立させる方法が分からない方も多いのではないでしょうか?
夫婦の話し合いでは簡単に同意できない場合もありますし、裁判には時間やお金が掛かるので避けたい方も多いと思います。
浮気を理由に離婚を成立させる具体的な方法を紹介します。

浮気の事実を証明する必要がある

浮気を理由に離婚を成立させるには、浮気の事実を証明する証拠が大きな意味を持ちます。
配偶者が浮気を認めていれば、事実関係の争いは起こらず証拠がなくても問題は起こりません。しかし、浮気をしていても事実を頑なに認めない方が多いのも事実です。
配偶者が浮気を認めず証拠もなければ、浮気の有無は誰にもわからずなかったして結論が出される可能性があります。
原則として、浮気の事実は原告である被害者側が証明する必要があります。

浮気の証拠は、浮気を問い詰めた後からでは入手が困難になりますので、事前に準備をしておく必要があります。
あなたが浮気を疑っていると分かれば痕跡を隠しますし、しばらくの間は浮気を自粛する方も多いようです。また、浮気を続ける場合でも行動に注意する方がほとんどです。
客観的な浮気の証拠を持っていないときには、浮気を問い詰める前に証拠を手に入れておく必要があります。
浮気の証拠が入手できない場合には、探偵の浮気調査を検討してみましょう

明確な証拠は裁判を避けるためにも役立つ

明確な浮気の証拠は、裁判を有利に進めるのに役立つだけではありません。裁判ではなく話し合いで離婚を成立させるためにも、浮気の証拠は大きな意味を持つ場合があります。
浮気の明確な証拠があれば裁判所が離婚を認めるので、配偶者が裁判をしても結果が変わらないと考え話し合いで離婚に同意する可能性があります。
裁判は時間がお金が必要で避けたいと考える方が多いですが、この気持ちは配偶者も同じです。
裁判で離婚ができる明確な証拠は、話し合いで離婚を成立させるときにも役立ちます。

話し合いでの離婚の成立を目指す

浮気の証拠が手に入ったら、夫婦の話し合いで離婚の成立を目指しましょう。
離婚の話し合いでは、強要や脅迫を受けたなどトラブルが起こる可能性があるので、第三者に同席してもらい密室を避けて行いましょう。また、言った言わないの問題を防ぐために、話し合いの内容は書面に残し署名捺印を求めましょう。

離婚の話し合いはお互いに冷静に行う必要があります。離婚に応じない理由として、夫婦の関係性が悪く感情的な理由で合意できない場合も少なくありません。
お互いに意地の張り合いになってしまい、一歩も引かない状態になると解決がより難しくなります。
話し合いが進まないときには、交渉を弁護士に代理してもらう方法を検討してみましょう。

話し合いで解決できないときは調停や裁判

夫婦の話し合いでは離婚が成立しないときには、調停で離婚の成立を目指します。
調停は夫婦の間に調停委員が入り話し合いを進める制度で、判決で強制的な結論が出せる裁判とは異なります。しかし、第三者である調停委員が間にはいると、話し合いに応じ解決できる場合も多いです。
調停は原則非公開で行われますのでプライバシーは守られます。また、必ず弁護士を利用しなければならない訳でもありませんので、金銭的な負担も少ないです。
夫婦の話し合いで離婚が成立しないときには、調停による離婚を検討してみましょう。
離婚問題で裁判まで発展するケースは少なく3%以下であり、大半の夫婦は協議や調停で離婚が成立しています。

調停でも離婚が成立しないときには、裁判で離婚を成立されるしか方法がありません。
裁判の判決には法的な拘束力があり、配偶者が応じない場合でも判決には従わなければいけません。一方で、こちら側が納得できない判決が出ても、裁判の判決には従う必要があります。
裁判は公開された法廷で行われますし、時間とお金が必要なデメリットがあります。しかし、あなたが法律で正しい主張をしていれば、満足ができる結果が出る可能性が高いメリットがります。

離婚をスムーズに成立させるには、明確な証拠を入手し、妥当な離婚条件を提示し、夫婦関係を悪化させない対応が大切です。
相手に対して不満を持つ気持ちも理解できますが、感情に任せて対応しても解決が難しくなりますし、一方的な離婚条件を求めても裁判では認められません。
理不尽な離婚条件を受け入れる必要はありませんが、妥協できる部分を譲ると合意できる可能性が高くなります。


まとめ

裁判所が離婚が認める浮気には条件があり、性的関係があったかが重要で性的関係がない浮気は原則として離婚ができません。
ただし、「婚姻を継続し難い重大な事由」と判断されれば、性的関係がなくても離婚を認める場合があります。
また、1度だけの不貞行為では離婚が認められない傾向にあり、複数回の浮気が行われていた事実が重要です。

裁判が原則として原告側に証明する義務がありますので、証拠がなく配偶者が浮気を認めない場合には離婚は困難です。
配偶者が浮気を認めていないときには、浮気が行われていたと証明できる証拠が必要です。明確な浮気の証拠があれば、裁判で有利になるだけでなく協議で離婚に応じる可能性も高くなります。
また、浮気の事実を争う必要がありませんので、解決までの時間やお金が掛からず無駄なストレスを減らせるメリットもあります。

離婚の話し合いは当事者で解決しなければならない問題ですが、交渉は弁護士を利用する方も多いです。また、浮気の証拠収集は探偵に依頼する方法もあります。
自分一人では解決ができないときには、専門家の力を借り解決する方法も検討しましょう。
浮気が原因の離婚は、準備を整え適切な対応を取れば高い確率で成立します。