弁護士の料金体系を解説


始めて弁護士を利用する方には、弁護士の料金体系は複雑で分かり難く感じるのではないでしょうか?
弁護士費用は依頼内容により一律に金額が決まっておらず、契約時には支払総額が分からない料金体系が一般的です。
また、弁護士費用は高いと聞いた方も多いと思いますので、料金に対して不安になる方が居ても仕方がないのかもしれません。

弁護士の料金体系は一律の料金で最後まで対応してくれる訳ではなく、和解で解決できるのか裁判になるのかで異なります。
また、受け取った金銭で料金が異なりますし業務に必要な諸経費が別途必要で、料金の総額が分かり難く不安を感じると言えるでしょう。

弁護士の料金体系が分かれば、支払総額が分かり弁護士を利用するかを決める参考になります。
弁護士の料金体系を説明していきます。

❏【 目 次 】 弁護士の料金体系を解説


弁護士の料金体系

トイレットペーパーや洗剤は、明確な販売価格が表示されていますので誰でも不安なく購入ができます。
対して弁護士の料金体系は、同じ依頼をしても支払総額が異なる料金体系です。慰謝料の請求は○○万円、離婚は○○万円と料金は決まっておらず、実費や成功報酬金で支払総額が異なり料金が分かり難いです。

トイレットペーパーや洗剤は、同じ商品を同じお店で販売するなら原価は同じですので同じ価格で販売が可能です。
弁護士の仕事は、依頼者の希望や相手の対応で業務内容が異なり、手間が違うため一律の料金設定が難しい特徴があります。
弁護士の料金体系は、着手金として一定の金額を事前に支払い、結果に対しては成功報酬金を支払う料金体系が一般的です。その他にも、弁護士が業務で使用した経費を依頼者が負担する必要があります。
このような料金体系は弁護士と依頼者の双方にメリットがあるのですが、料金体系が複雑で分かり難いデメリットもあります。

同じ依頼でも料金が異なる

弁護士の費用は、離婚問題なら総額で○○万円で解決するまで対応してもらえる訳ではありません。状況によって支払総額が異なる料金体系が一般的です。
たとえば、離婚問題を弁護士に依頼したときには、離婚を成立させるだけなのか、慰謝料、財産分与、親権、養育費の交渉も弁護士に依頼するかで費用は異なります。
また、相手との交渉で協議離婚が成立する場合もあれば、調停や裁判でなければ解決できない場合もあり、解決方法によっても費用は大きく異なります。その他、慰謝料や財産分与などお金に関する依頼では、受け取れた金額により成功報酬金が必要な契約が一般的です。

弁護士費用は同じ依頼でも状況により料金が異なり、事前に総額が分かり難い料金体系でもあります。
利用者にとって不安を感じる料金体系ではありますが、弁護士も事前に仕事量が分からない理由もあります。

複数の料金体系がある

弁護士には主に3つの料金体系があります。

  • 着手報酬金制
    最も一般的な料金体系で弁護士料金の基本です
  • タイムチャージ制
    弁護士が動いた時間を基に料金が発生します
  • 顧問契約
    法人など定期的に弁護士を利用する方に適しています

着手報酬金制は最も一般的な弁護士の料金体系で、多くの弁護士事務所で取り入れています。
弁護士に依頼した時点で着手金を支払い、結果が出たときには別途成功報酬金を支払う料金体系です。また、依頼に対して必要な経費が別途必要な契約が一般的です。
結果を伴う依頼に適した料金体系であり、慰謝料の請求、離婚の成立、親権の獲得では着手報酬金制の料金体系が一般的です。

タイムチャージ制の料金体系は、シンプルに弁護士が働いた時間に対して料金が発生する料金体系です。
相手との話し合いに弁護士に同席して貰うときなど、スポットでの仕事を弁護士に依頼するときの料金体系です。
弁護士への法律相談の費用も、タイムチャージ制の料金体系と考えてよいでしょう。
また、多少内容が異なる部分もありますが、書類の作成を依頼したときもタイムチャージ制の料金体系に近いです。

顧問契約とは、毎月弁護士に一定金額を支払い、一部の業務を無料や安い料金で利用できる契約です。定期的に弁護士を利用する方に適しており、主に企業が弁護士を利用するときに適した料金体系です。

このページでは、弁護士の料金体系で最も一般的な「着手報酬金制」につて説明します。

弁護士により料金が異なる

平成16年までの弁護士費用は、日本弁護士連合会が定めた弁護士報酬基準で決まっており、原則として全ての弁護士が同じ費用でした。
しかし、現在では規制緩和で基準が撤廃されており、各弁護士事務所が自由に報酬を決めています。

規制が緩和された現在でも、旧弁護士報酬基準を参考にして料金を決めている弁護士が多ですが、独自に料金を決めている弁護士も増えています。
そのため、弁護士事務所により料金が異なり、初回の相談料が無料や着手金が安い弁護士もいるようです。
費用の安さだけで弁護士を選ぶのではなく、あなたの希望に合う弁護士の利用が大切です。


弁護士費用は主に5つの料金がある

弁護士費用は、複数の意味を持つ料金が発生し全て合計した料金が支払総額です。

弁護士費用は次の5の料金がある。

  • 相談費用
    弁護士に法律相談をするときに必要な費用
  • 着手金
    弁護士に依頼するときに必要な費用
  • 成功報酬金
    結果に対して発生する費用
  • 日当
    弁護士を拘束するときに必要な費用
  • 実費
    交通費、宿泊費、印紙代の経費

一般的には、弁護士に業務を依頼した時点で「着手金」を支払い、結果に対しては別途「成功報酬金」の支払いが必要です。
また、和解交渉を依頼したが和解が成立せず調停や裁判に進んだときには、調停や裁判に対しては新たに着手金が必要です。
その他にも「相談費用」「日当」「実費」が必要に応じて別途発生する料金体系が一般的です。

相談費用

弁護士に相談をするときに必要な費用です。
通常は電話で日時を予約し、弁護士事務所に伺って法律相談をします。
弁護士から法的なアドバイスを受けたり不安点を相談できます。

家電製品や車を購入するときには、商品に関する相談や説明が無料ですので、相談だけでお金が掛かるのに違和感を感じるかもしれません。
しかし、弁護士は法的な知識が商品でもあるので、相談だけで料金が発生しても当然です。
このような料金体系は、コンサルタントや税理士を考えて頂ければ分かりやすいと思います。

相談費用は1時間につき5,000円~10,000円が相場ですが、初回の相談を無料で行っている弁護士もあるようです。
弁護士への相談のみでしたら高額な料金は必要ありませんので、法律に関して不安がある方は弁護士に相談をしてみましょう
弁護士に相談をしたからと言って必ずしも依頼をする必要はありません。相談だけで解決できる場合もありますし、相談をしてから依頼するかしないのか、他の弁護士にも相談するかを決めても大丈夫です。

着手金

着手金は、弁護士に依頼をする際に支払う必要がある費用です。
結果が希望通りに「終わった・終わらなかった」に関わらず支払う必要があり、結果が出なかったり途中で依頼を辞めても返金されません。
着手金は依頼内容により金額が異なりますし、和解が成立せず調停や裁判を行う場合には、新たに調停や裁判の着手金が必要です。

着手金は、依頼する内容(請求する金額など)で決まり、請求金額が300万円以下であれば、示談交渉は10~20万円、調停は20~30万円、裁判は30~40万円が相場です。
示談や調停で合意ができず裁判に進んだときには、裁判に対する新たに着手金が必要です。一部の弁護士では、新たな着手金に関しては減額してくれる弁護士事務所もあるようです。

成功報酬金

成功報酬金は、契約した結果が出たときに支払いが必要な費用で、契約した結果が出なければ支払う必要はありません。
成功報酬金の取り決めは少し複雑な場合もあり、弁護士事務所によっても異なるようです。
一般的には、金銭的なメリットに対しては受け取った金額の〇〇%、親権や離婚など金銭以外のメリットには一律○○万円と決めます。

成功報酬金は、金銭的なメリットに対しては受け取った金額の10~15%、離婚の成立のみですと20~50万円、親権の獲得は別途10万円が相場です。

日当

出張などで弁護士を一定時間拘束するときに必要な費用です。
調停や裁判は相手の居住地の裁判所で行う必要があり、相手が遠方に住んでいると弁護士の日当が必要です。相手と会っての示談交渉でも、弁護士を拘束すれば日当が必要な場合があります。
日当は、1日当たり3~5万円程の料金が相場で、複数日になるとある程度の金額が必要です。

実費

弁護士が依頼を行う上で、実際に支払った交通費、宿泊費、印紙代、切手代の諸経費を実費と言います。
弁護士に業務を依頼した場合には、活動に必要な実費を別途請求する契約内容が一般的です。

和解で解決できる場合には、大きな実費が発生するケースは少ないようです。
一方で、調停や裁判では、印紙代、切手代、調書の謄写代が必要です。また、相手の居住地の裁判所が管轄になる場合には、交通費や宿泊代が必要である程度の金額が発生します。


弁護士の料金について

弁護士費用の料金体系を説明してきましたが、弁護士費用の目安や安く利用する方法を紹介します。
弁護士は費用は各弁護士が自由に設定できますが、ある程度の相場がありますので紹介します。また、料金だけでなく経験やあなたとの相性も考慮して弁護士を決めましょう。

(旧)弁護士報酬基準

平成16年までの弁護士費用は、日本弁護士連合会が定めた「弁護士報酬基準」で決まっており、どの弁護士に依頼をしても基本的に同じ費用でした。
現在では規制緩和で基準が撤廃され、各弁護士事務所が自由に弁護士報酬の額を定めています。
しかし、長い間基準として使われていただけあって適正と言えるケースも多く、現在でも旧弁護士報酬基準を参考に料金を決めている弁護士が多いようです。
旧弁護士報酬基準では、細かく報酬を決めていますが一部を紹介します。

着手金

着手金は、相手に請求する金額を基に決めます。
高額な金額を請求する場合には着手金が高くなり、結果が得られなくても支払いが必要な料金でもあります。

経済的利益の額が300万円以下の場合には8%
300万円を超え3000万円以下の場合には5%+9万円
3000万円を超え3億円以下の場合には3%+69万円
3億円を超える場合には2%+369万円
※ただし、着手金の最低額は10万円です。

成功報酬金

成功報酬金は、相手から回収できた金額を基に決めます。
金銭的めるっとが大きいと成功報酬金も高くなりますが、結果が出なければ支払う必要がない料金でもあります。

経済的利益の額が300万円以下の場合には16%
300万円を超え3000万円以下の場合には10%+18万円
3000万円を超え3億円以下の場合には6%+138万円
3億円を超える場合には4%+738万円

相談費用

弁護士への相談費用は、相談した時間を基に決めます。
30分ごとに5000円から2万5000円以下と決まっており、金額には大きな開きがあります。

法テラスの利用も検討

法テラスとは、正式名称は「日本司法支援センター」で、「法的トラブルを抱えている方々が法律の専門家である弁護士等の法的サービスをより身近に感じ利用しやすくすること」を目的とした国の機関です。
簡単い言うと、所得や資産が一定額以下の方が法テラスを通して弁護士や司法書士に依頼すると、安い料金または後払いで利用できる制度です。

法テラスの「法律相談援助」を利用するには一定の条件があり、次の2つの条件を満たす必要があります。

  • 収入、資産が一定額以下である
  • 民事法律扶助の趣旨に適する(宣伝目的、権利濫用などとは認められない)

また、「代理援助・書類作成援助」を受けるには、上記2つの条件に加え「勝訴の見込みがないはいえない」を満たす必要があります。

法テラスは、経済的な理由で弁護士の利用できない方を救済する意味合いがあり、弁護士費用だけを考えればメリットがあります。
ただし、条件の審査に時間が掛かったり依頼したい弁護士が法テラスからの依頼を受任しない可能性もあります。
また、付随した新たな問題が発生しても、対応してもらえない場合がありますので注意しましょう。
細かな部分も弁護士に相談し対応を求めたい方は、自分の気に入った弁護士に法テラスを通さず直接依頼しましょう。

法テラスが利用できる条件は、家族構成や住んでいる地域により一定以下の所得である方、資産が一定以下の方が対象です。経済的に余裕がある方は法テラスを利用できません。
法テラスが利用できる所得基準は、単身者は手取り月収が18万2000円以下、2人家族は25万1000円、3人家族は27万2000円、4人家族は29万9000円以下です。ただし、政令指定都市などの大都市部ではこの1割増が基準となっています。
また、家賃、住宅ローン、医療費を負担していると、一定額が考慮される場合があります。
その他に資産基準もあり、単身者の場合180万円以下、2人家族の場合250万円以下、3人家族の場合270万円以下、4人家族の場合300万円以下が利用できます。
法テラスは費用の面でメリットがありますが、経済的な基準があり利用できる方は限られます。

その他にも細かな利用基準があります。また、内容が変更されている可能性もありますので、詳細は法テラスのホームページで確認してください。
法テラスホームページでは、弁護士や司法書士を法テラスで利用した時の費用も確認ができます。

≫ 法テラス ホームページ

弁護士は費用だけで決めない

弁護士を選ぶ際には、弁護士費用は一つの判断材料になる方が多いと思います。
ただし、弁護士により得意分野がありますし、あなたとの相性も大切ですので、料金以外も考慮して弁護士を選びましょう。

裁判で判決を出すのは弁護士ではなく裁判官の権限であり、裁判官は法律に基づき適切な判決を出します。
裁判官は「弁護士の優劣によって結論が変わることを潔しとしない。」考えを持っている人も多く、判決は事実と法律により決めるべきとの基本精神があります。
つまり、弁護士が誰であっても同じ結論でなければ矛盾が生じるのですが、実際には弁護士により結論が変わる可能性があります。
依頼内容に対して経験が豊富で専門知識がある弁護士なら、よい結果が得られる可能性があります。

裁判ではなく和解で解決を目指す場合でも、弁護士によって結果が変わる可能性があります。
弁護士は豊富な法律の知識を持っていますが、和解では交渉力など法律以外の能力が必要な場面があります。弁護士によって交渉力に差があって当然で、和解交渉では弁護士により結果が変わる可能性があります。

弁護士を選ぶときには、あなたとの相性も大切な要素となります。弁護士とはデリケートな問題を話し合う必要がありますし、あなたにとって重量な決断をしなければならない場合もあるでしょう。
あなたの気持ちを理解して親身になってくれる弁護士は、非常に心強いですし頼りになる存在になるでしょう。


まとめ

弁護士の料金は、慰謝料の請求や離婚などの依頼内容だけで料金が決まる訳ではありません。弁護士の業務や結果に対しても料金が変わる料金体系です。
そのため、同じ内容を依頼した場合であっても、相手の対応や請求金額により支払総額が異なります。

弁護士費用には複数の料金体系がありますが、着手報酬金制が最も一般的な弁護士の料金体系です。
着手報酬金制の料金体系は、弁護士に依頼した時点で着手金を支払い、結果が出たときには別途成功報酬金を支払う料金体系です。また、依頼に対して必要な経費が別途必要になる契約が一般的です。
弁護士費用は複数の意味を持つ料金が発生し、その合計が弁護士への支払総額です。

弁護士を決めるときには、費用が重要な判断項目となりますが、料金だけで弁護士を決めてはいけません。
弁護士により得意分野がありますので、あなたの依頼内容に対して経験が豊富な弁護士に依頼しましょう。また、あなたとの相性も重要な要素ですので、信頼ができ親身になってくれる弁護士の利用も大切なのではないでしょうか。