探偵業者のホームページを見ていると、「探偵業法」という言葉がよくでてきます。
一般の人にはなじみがない法律ですので、どのような法律なのか分からない方も多いのではないでしょうか?
法律と聞くと何だか難しく感じる方も多いと思いますが、探偵を利用するときには理解しておいた方がよい法律です。
探偵業法とは、正式には「探偵業の業務の適正化に関する法律」といいます。「探偵業について必要な規制を定めることにより、その業務の適正を図り、もって個人の権利利益の保護に資することを目的とした法律」です。
平成18年6月に制定され平成19年6月から施行され、令和元年12月に一部改正が行われました。
探偵業法が制定された背景や目的が分かると、探偵を利用する際の不安が解消できるかもしれません。
このページでは、探偵業法について解説していきます。
❏【 目 次 】 探偵業法を解説
探偵業者に対して、悪いイメージを持っている方も多いのではないでしょうか?
一部の探偵業者は反社会的勢力とのつながりがあったのも事実ですし、違法な手段による調査が行われていた過去があります。また、調査対象者の秘密を利用し、恐喝を行っていた事実もあるようです。
探偵には不適切な行為をしていた過去があり、利用者が探偵の利用に不安に感じるのも当然です。また、悪いイメージを作ってきた原因は、探偵業者にあると言えるでしょう。
以前は調査業を規制する法律がなく、問題がある探偵を排除する目的で「探偵業の業務の適正化に関する法律(以下、探偵業法)」が施行されました。
探偵業法では、暴力団員や特定の犯罪歴がある者が探偵業を営むのを禁止し、違法行為を行った業者には営業の禁止や廃止命令が可能です。また、契約時の義務、秘密の保持、従業員の教育の規定があります。
探偵業法は探偵の利益のための法律ではなく、探偵を利用する方や第三者の利益や権利を保護する目的としています。
そのため、探偵業法の施行により以前よりも安心して探偵を利用できるようになりました。
探偵業法ができる以前は、依頼者との契約内容をめぐるトラブル、違法な手段による調査、調査対象者の秘密を利用した恐喝、従業者による犯罪が発生しており、安心して利用できる環境ではありませんでした。
また、一部の探偵は反社会的勢力とつながりを持っており、利用者が不安を感じる一つの原因にもなっていました。
違法な手段による調査は、証拠が裁判で認められなかったり利用者が不利な立場に立たされる可能性があり、最終的には利用者の不利益につながります。
慰謝料の請求を代行している探偵もありましたが、弁護士以外が法律に関する交渉を行うと非弁行為に当たる可能性があります。また、慰謝料の請求は、方法を誤ると恐喝や脅迫として犯罪になる可能性もあります。
探偵業法が施行される以前は、不適切な行為が公然と行われており探偵の悪いイメージを作った大きな原因となっています。
探偵業法は、個人の権利や利益の保護を目的とした法律です。
ここで言う個人とは対象者や第三者も含まれますが、利用者の権利や利益を守る規制も定めています。
具体的には以下の内容が利用者の利益につながります。
探偵業法では、依頼者の権利や利益を守るための多くの規制があります。
探偵業法の施工により、違法行為を行っている探偵はほとんどなくなってきていますし、探偵と利用者のトラブルも大幅に減少しています。
また、万が一探偵との間でトラブルが発生してしまっても、以前よりも対応が取りやすくなったメリットもあるでしょう。
ただし、全ての探偵が探偵業法を順守しているとは言い切れません。また、明確に違法とは言えない、グレーゾーンの行為を行っている業者も少なからずあるようです。
探偵業法を理解し適切な探偵を利用すれば、探偵とのトラブルを防げる場合があります。
探偵業法の対象となる探偵業務とは、「他人の依頼を受けて、特定人の所在又は行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として、面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務」と定義されています。
つまり、これらの方法で調査を行うと、探偵とは名乗っていない業者や個人も探偵業法の対象です。
たとえば、便利屋など探偵ではない業者も探偵業務を行えば探偵業法が摘要され、公安委員会への届け出や名簿の作成が必要です。
また、業者ではない知人に頼んだ場合でも、営業と判断されれば探偵業法が摘要されます。
探偵業法は、依頼者の権利や利益を保護する目的の法律ですので、依頼するときには探偵業法を守っている業者の利用が大切です。
探偵業の届け出を行っていない業者への依頼は、利用者がトラブルに巻き込まれないためにも避けましょう。
また、探偵業者でも探偵業法を厳守していない業者を利用すると、トラブルに発展する可能性が高いので注意しましょう。
探偵業法は、個人の権利や利益の保護を目的とした法律で、探偵業法を厳守している業者かの確認は大切です。
探偵に詳しくない方でも、探偵業法を厳守しているのか確認できる項目を紹介します。
探偵業法では、営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会へ営業の届出が必要です。
公安委員会に届け出を行うと、営業所ごとに届け出番号が割り振られます。また、全ての探偵業者は営業所の見やすい場所に所定の「標識」の掲示が必要です。
ホームページに届け出番号を記載している業者も多いですので、一つの参考にできるでしょう。
探偵業法では契約時に2つの書類を義務付けています。
一つは「契約の重要事項の書面」で、契約前に公布と説明を義務付けたいます。2つ目の書類は「契約の内容を明らかにする書面」で、料金、契約日、調査日の記載と説明を義務付けています。
2つの書類がそろっており詳細な説明を行ってくれる探偵は、探偵業法に関する最低限のルールを守っています。
過去に行政処分を受けた探偵業者は、各都道府県警察または公安委員会のホームページで、一定の期間公表していますので確認ができます。
過去に行政処分を受けた探偵業者は、何らかの不適切な行為があった探偵業者ろ判断ができます。
利用を検討している探偵が過去に行政処分を受けていないかを確認しましょう。複数の支店がある場合には、全ての支店の行政処分を確認しましょう。
警察庁が公表している、探偵業の業務の適正化に関する法律を掲載します。
警察庁や各都道府県の警察のホームページにも掲載していますので確認してみましょう。
探偵社、興信所等の調査業については、
等の悪質な業者による不適正な営業活動が後を絶ちませんでした。
これまで、日本には、調査業を規制する法律はありませんでしたが、このような状況にかんがみ立法化が検討された結果、調査業のうち探偵業について、「探偵業の業務の適正化に関する法律」(以下「探偵業法」といいます。)が平成18年6月8日に公布され、平成19年6月20日に施行されました。
探偵業法は、探偵業について必要な規制を定めることにより、その業務の適正を図り、もって個人の権利利益の保護に資することを目的としています。
探偵業務とは、
業務をいいます。
この探偵業務を行う営業を「探偵業」といいますが、専ら放送機関、新聞社、通信社その他の報道機関(報道(不特定かつ多数の者に対して客観的事実を事実として知らせることをいい、これに基づいて意見・見解を述べることを含む。)を業として行う個人を含む。)の依頼を受けて、その報道の用に供する目的で行われるものは除かれます。
次の1~7までのいずれかに該当する者は、探偵業を営んではなりません。
探偵業を営もうとする者は、営業を開始しようとする日の前日までに、営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会に、所轄警察署長を経由して、営業の届出をしなければなりません。
また、探偵業を廃止したとき、又は届出事項に変更があったときは、廃止等の日から10日以内に、その旨の届出をしなければなりません。
これらの届出は、営業所ごとに行わなければなりません。つまり、複数の営業所を有する探偵業者は、それぞれの営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会に、届出をしなければなりませんし、同じ都道府県内に複数の営業所を有する探偵業者は、同じ都道府県公安委員会に、複数の届出をすることとなります。
それぞれの届出書の添付書類は、探偵業の業務の適正化に関する法律施行規則において定められています。
例えば、探偵業開始届出書の添付書類は、届出者が個人である場合は住民票の写し、欠格事由に該当しないことを誓約する書面等、届出者が法人である場合は定款、役員に係る住民票の写し等です。
届出をした者には、探偵業届出証明書(届出があったことを証する書面)が交付されます。
探偵業者は、探偵業届出証明書を営業所の見やすい場所に掲示しなければなりません。また、探偵業者は、契約を締結しようとするときは、あらかじめ、依頼者に対し、探偵業届出証明書の記載事項について、書面を交付して説明しなければなりません。
探偵業の届出をした者は、自己の名義をもって、他人に探偵業を営ませてはなりません。
探偵業務に係る契約の適正化を図るため、依頼者側の問題に関する義務と探偵業者側の問題に関する義務が定められています。
探偵業者は、依頼者と探偵業務を行う契約を締結しようとするときは、依頼者から、調査結果を犯罪行為、違法な差別的取扱いその他の違法な行為のために用いない旨を示す書面の交付を受けなければなりません。
探偵業者は、その従業者に対し、探偵業務の適正な実施のために必要な教育を行わなければなりません。
公安委員会は、必要な限度において、探偵業者に対し、報告や資料の提出を求め、又は警察職員に立ち入り、検査させ、若しくは関係者に質問させることができます。
公安委員会は、探偵業者がこの法律又は探偵業務に関し他の法令の規定に違反した場合において、適正な運営が害されるおそれがあると認められるときは、必要な措置をとるべきことを指示できます。
公安委員会は、探偵業者がこの法律又は探偵業務に関し他の法令の規定に違反した場合において、適正な運営が著しく害されるおそれがあると認められるとき、又は指示に違反したときは、当該営業所における探偵業務について、6月以内の期間を定めて、その全部又は一部の停止を命ずることができます。
公安委員会は、法第3条(欠格事由)各号のいずれかに該当する者が探偵業を営んでいるときは、その者に対し、営業の廃止を命ずることができます。
対象 | 罰則 |
---|---|
届出をしないで探偵業を営んだ者 | 6月以下の懲役又は30万円以下の罰金 |
届出書・添付書類に虚偽の記載をして提出した者 | 30万円以下の罰金 |
変更・廃止の届出書・添付書類を提出しなかった者 | 30万円以下の罰金 |
変更・廃止の届出書・添付書類に虚偽の記載をして提出した者 | 30万円以下の罰金 |
名義貸しをした者 | 6月以下の懲役又は30万円以下の罰金 |
契約を締結しようとするときに、重要事項について書面を交付しなかった者 | 30万円以下の罰金 |
必要事項を記載しない書面又は虚偽の記載のある書面を交付した者 | 30万円以下の罰金 |
契約を締結したときに、契約内容を明らかにする書面を交付しなかった者 | 30万円以下の罰金 |
必要事項を記載しない書面又は虚偽の記載のある書面を交付した者 | 30万円以下の罰金 |
従業員名簿を備え付けなかった者 | 30万円以下の罰金 |
従業者名簿に必要事項を記載せず、又は虚偽の記載をした者 | 30万円以下の罰金 |
都道府県公安委員会による報告・資料提出の求めに応じなかった者 | 30万円以下の罰金 |
報告・資料提出の求めに対し、虚偽の報告をし、又は虚偽の資料を提出した者 | 30万円以下の罰金 |
都道府県公安委員会による立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した者 | 30万円以下の罰金 |
都道府県公安委員会による指示に違反した者 | 6月以下の懲役又は30万円以下の罰金 |
都道府県公安委員会による営業停止命令に違反した者 | 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
都道府県公安委員会による営業廃止命令に違反した者 | 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
探偵業の依頼者を保護するため、平成23年7月、探偵業の業務の適正化に関する法律に基づく行政処分の公表状況を定め、各都道府県警察又は各都道府県公安委員会のホームページにおいて、次に掲げる行政処分を受けた探偵業者について、次の内容及び期間、公表しているところである。
詳しくは、各都道府県警察及び各都道府県公安委員会のホームページをご覧ください。
探偵業法が施行される以前は、契約内容をめぐるトラブル、違法な手段による調査、調査対象者の秘密を利用した恐喝、従業者による犯罪が多く発生していました。
そのため、探偵に対して悪いイメージを持っている方もいました。探偵業法の施行後は悪質な業者は減少しており、以前と比べ安心して利用できるようになっています。
ただし、全ての探偵業者が優良な訳ではありませんので、依頼するときには慎重に業者を選ぶ必要があります。
探偵業法は、個人の権利や利益の保護を目的とした法律です。
探偵業法を厳守している探偵業者であれば、ある程度はトラブルを避けられると考えられます。
一方で、探偵業法を守っていない探偵は、その他の法律も守っていない可能性があるだけでなく、適正に調査が行われるかも疑わしいです。このような探偵や探偵以外の業者の利用は避けましょう。
明らかな違法行為を行っている探偵はないと思われますが、契約内容や料金に関するトラブルは少なからず発生しています。
探偵業者を選ぶときには、契約書を作成してくれて、詳細な説明があり、料金をホームページで公開している業者を選びましょう。
探偵の利用に必要以上に警戒する必要はありませんが、他の契約と同じように最低限の確認は大切です。また、実際に会って話をしてみて、信頼できる業者への依頼が大切なのではないでしょうか?